【HARU Fromagere・Cafe】
千葉県は日本の酪農発祥の地ということをご存知だろうか?
千葉県安房地方の牧畜は、平安時代にさかのぼるといわれているが、本格的には戦国時代の里見氏が軍用馬育成のため、嶺岡山(みねおかやま)に牧場を開いたのが始まりである。
江戸幕府もこれを継承したが、享保13年(1728)に享保の改革で有名な八代将軍徳川吉宗によって、牛酪(バターの類)製造のために印度産白牛3頭がここに放たれ、我が国最初の「白牛酪」がつくられた。その後、寛政(1789~1801)の頃には70余頭に繁殖したと伝えられている。
明治維新後、新政府により嶺岡牧は接収され、公的な酪農産業の育成が図られたが、一時的に民間への払い下げを経た後、明治44年(1911)に千葉県に移管され、千葉県嶺岡乳牛試験場が発足し、千葉県が全国有数の酪農県となる基礎を築いた。
そんな日本酪農の聖地ともいえる千葉県で、どうしても行ってみたいチーズ工房があった。
【haru Fromagerie・Café】〜ハル フロマジェリー・カフェ〜
千葉県いすみ市山田332
房総半島の南東部に位置するいすみ市は、東に向かえば太平洋に面し、海水浴場や伊勢海老の漁獲量日本一の漁港がある。一方、西に向かえば自然豊かな山々とその合間を縫うように水田や畑が広がっている。
海の幸と山の幸を僅か数十キロ圏内で、味わうことのできる恵まれた地域だ。
気候も温暖で、農耕や牧畜にも向いている。
このような自然豊かな土地に、2018年7月20日に新たにチーズ工房兼カフェが誕生した。
オーナーの吉見真宏さんは、同地の高秀牧場チーズ工房の立ち上げた時のチーズ製造責任者であり、チーズ造りをフランス・オーヴェルニュ地方のサンネクテール生産者と北海道のチーズ工房で学んだ筋金入りのチーズ生産者だ。
高秀牧場チーズ工房でチーズ製造している時に【Japan Cheese Awards】で2度金賞を受賞している。
2014年・2016年 「まきばの太陽」が連続金賞受賞。
千葉県チーズ工房巡りの二日目、朝一でクルックフィールズさんのチーズ工房で水牛製モッツァレラチーズの製造を見学・試食し、昼ごはんに初ガツオとマグロの刺身定食を食べた後に、ハルさんのチーズ工房に向かうこととなった。
曲がりくねった山道と田んぼを横目に30分ほど走った先に、民家がぽつぽつと建っている。そんな牧歌的な風景の中に溶け込むように「ハル フロマジェリー・カフェ」があった。
外観はここにチーズ工房があるとは思えないほど、和風の一軒家...
格子の扉を引くと店内は、天井が高いおしゃれなカフェだった。向かって右側に座りごごちのいい木製の椅子と温かみのあるテーブルが2つ、手前に2席のカウンター席...左側にはレジと冷蔵ショーケース、調理場が見える。一瞬、都会に戻ってきたような錯覚をしてしまった。
冷蔵ショーケースにはケーキではなく、もちろんチーズが置かれている。
そう、ここはチーズ工房兼カフェだった。
ここの売りは吉見さんの奥様がつくるガレットとクレープ...
主食タイプのガレットとデザートタイプのクレープを作っていて、見た目も美味しそうだ。
私は以前ガレットの本場フランスのブルターニュでガレットを食べたことがあったので、ぜひ食べてみたかった...ただ、昼に食べた定食がボリュームがありすぎてお腹がパンパンだった💦
とはいえ、ここは勝負しなければいけないと同行者の方と半分づつ食べるということで両方頼むことにした。
感想はもちろん頼んで良かった♪
「ガレット シャンピニオン」は本場で食べたそば粉のガレットと同じ焦げ茶の生地の上にマッシュルームとホワイトソースが乗せられ四方を折りたためられている。そこに、新鮮な卵の黄身が中央に顔を見せる。見た目も抜群!
味もいうまでもなく、素朴なそば粉のガレットにマッシュルームのほのかな香りがよく合う。卵とホワイトソースの相性も間違いない!
さて、デザートのクレープはシンプルにクレープ生地にアイスクリームを乗せたもの...甘いものがあまり得意ではない私には、この優しい甘みが心地いい、アイスももちろん新鮮なミルクで作っているのが分かる余計な味付けはしていない。
コーヒーも頼んだのだが、深煎りの濃厚な味わいがよく合った。
ガレットの話はこれぐらいにしておこう。
ここに来た目的はチーズだ。
まずチーズプレートを注文し、チーズの試食をしてみた。
〈フロマージュ・ブラン〉
〜これほど滑らかで酸味が柔らかい日本のフロマージュ・ブランを食べたことがない〜
〈ハル〉
〜自然にできる酵母の表皮をまとったソフトタイプのチーズ。滑らかな舌ざわりとほのかに乳糖の甘味を感じる優しい味わいから
〈スープル〉
〜モチっとした質感に舌ざわりは粘着きが少なく歯ごたえが心地いい。アフタヌーンティーなどと一緒に食べても良さそうだ〜
〈ブルー〉
〜灰をまぶした表皮に真っ白な生地、まだらに散らばった青かびの層が実に綺麗にまとまっている。塩味は強めだが、それを補うかのような濃厚なミルクの風味と青かびの刺激が全体をバランスよくまとめていて、突出した苦味などもない。フランス オーヴェルニュ地方のフルムダンベールにも似た食感でブルーチーズが苦手な人でも楽しめそうだ〜
この4種類をカフェの奥のチーズ工房で製造している。
吉見さんのご厚意で、チーズ製造の現場を見せていただくことができた。
そこは非常に機能的にまとめられた配置で、吉見さん一人でチーズ製造するために造られたマイクロチーズ工場だった。なにより清潔感に溢れていた。
器具一つとっても、ピカピカなのだが、聞いたところによるチーズ製造の機械もほぼ自作したとのこと。
それもそうだ。こんな小さいチーズ工場に合わせた機械などメーカーは造らないだろう。
しかし、このスタイルが日本のナチュラルチーズ製造の流行りになっていくんじゃないだろうか?
大規模な牧場は、JAや学校給食などにミルクを卸しており、そのしがらみはなかなか断ち切ることはできない。さらに、チーズ製造に移行するにしても、大規模な事業転換には莫大な資金がかかる。そして、作っても売れるという保証もない。だから、大規模なチーズ工場はこれからも作りにくい現状がある。
このような事情から、ご当地の小さな牧場の小さなチーズ工房が増えているように思う。そんな小さなチーズ工房のほうが、色んな挑戦ができる。だからこそ、これからの日本のナチュラルチーズを引っ張っていくチーズ工房がどんどんできてくるだろう。(できてほしい…💦)
カゼウスでも積極的に取材をして、本当に美味しい日本のチーズを取り扱っていきたいと思う。
さぁ、千葉県に旅行に行かれるときは、どこか一つくらいチーズ工房を訪ねてみてはいかがでしょうか?
最後まで読んでいただきありがとうございます。