千葉県、南房総の東側にいすみという市がある。関西圏で暮らしていると馴染みのない名前だが、さらに南に下れば、漁港で有名な勝浦市あるので、なんとなくの場所が予想できる人もいるかもしれない。
しかし、向かうの場所は海とは反対方向、曲がりくねった山々を越えた先にある。
見回しても、山や丘、小川が広がり近くに海があることを忘れるほど、のどかな山村に突如、チーズ工房があらわれる。
車一台分しか通れない細い道を少し登ったところにくぼ地がある、ここがどうやら駐車場らしい…(笑)
ワゴンタイプの車が一台ギリギリ入る大きさで、帰りはバックで行くしかない
車から出て、さらに徒歩で少し歩くと左側には水田が広がっていて、右側には山の斜面が続いている。そのさきに、山が削られたような跡があり、手前にゆるい傾斜の細い坂道が上につづいていた。
そこに小さな女の子が2人遊んでいる姿がみえる、「チーズ工房IKAGAWA」さんのところのお子さんのようだ。
軽く挨拶して、さらに上に進んでいくと、木々に囲まれたなかに、かなり年季の入った民家がひっそりと佇んでいる。(ここでチーズの製造が行われているらしい。)
”トトロ”の世界に紛れ込んだかのような何とも言えない郷愁感が沸き上がってきた。
縁側が見える軒下に、まるで昔のタバコ屋のようなカウンターが設えてあり、そこに遠慮気味にチーズが並べられている。
なんか懐かしい…昔の駄菓子屋の感じがする。ただ、売っているのはおばちゃんではなく、まだ若い女性でここの工房の奥さんだった。
旦那さんは、今、搾乳中でここにはいないとのこと...
他のメンバーが色々と奥さんと話されている間、周りを少し散策してみると、壺に水を貯まっていて、そこにメダカが飼われている、その隣にはカブトムシの家とたどたどしい文字で書かれた小屋があった。(かなりでかい…でもまだ幼虫なのかその姿は見えなかった。)
母屋のとなりの納屋の奥には羊が一頭じっとこっちをみている、そのとなりに房総地鶏や烏骨鶏飼われてた。
その隣にも庭が広がっていてミョウガが、自生してるかのように大量に生えている。
広いな…
全然田舎で暮らしたことがないのになんか懐かしい…昔の日本はこんな感じで、自給自足していたんだろうな。
娘さんたちが、鶏に餌をやったついでに、生みたての卵を回収している。(うわさでは、ここの卵かけご飯がうますぎるらしい。)
さて、ようやく話も終わり、チーズの購入も終わったところで、牛を放牧している現場を見に行くことに…
車に乗り込み、さらに急峻な坂道を上った先に放牧地があった。
もとは田んぼだったが、今は休耕地となっている場所を借りて、そこにジャージー牛を放牧しているという。
迷惑にならないよう遠目で現場をみて、そのままこの地を去ることとなった。
ここのチーズの特徴は、輸入飼料に頼らず、放牧した牛のミルクのみでチーズを作ることにある。これができるのも一年中青草が生えている温暖な土地があるからだ。
青草を食んだジャージー牛のミルクはカロテン量が多く、チーズは黄色くなる。
出来上がったチーズは、まだまだ粗削りだが、親しみやすい味わいだ。
これからもっともっと色んなチーズに挑戦してほしい。
とても小さなチーズ工房であるが、これからこのようなマイクロチーズ工房が日本のチーズ文化を作っていくだろうと私は考える。当店でも、できるだけこのような小さなチーズ工房のチーズを扱っていきたいと思う。
チーズファンの皆さんにもぜひ応援してほしい。
家族経営でまだ小さいお子さんが5人と子沢山。
チーズの販売だけでは、ちょっと厳しい。
日本のフェルミエ〈農家製〉チーズを実践している数少ない生産者である...、ぜひ 頑張ってほしい…