世界中にあるブルーチーズの中でも、世界三大ブルーチーズというものがあります。イタリアの「ゴルゴンゾーラ」、イギリスの「スティルトン」、そしてフランスの「ロックフォール」。この3つの中で、一番歴史があり、風味が強く個性的と言われているのが、「ロックフォール」です。紀元前から存在したとも言われるフランスを代表するブルーチーズで、逸話によると恋する若い羊飼いが昼食をとっていた洞窟にライ麦パンとチーズを置き忘れて、数日後、見に行くとチーズの中心に青カビが生えていたといいます。
それ以来、羊飼いたちは、コンバルー山の石灰岩の洞窟でチーズを熟成するようになりました。
1411年からは国によって保護されるようになり、時のフランス国王シャルル6世は、ロックフォール=シュール=スールゾン村の人々がこのチーズを作ることを許可する書類に署名。そして1926年には、チーズとしてはじめてAOCを取得したフランスを象徴するようなチーズなのです。
幅約300メートルの天然の洞窟は、地下4~5階の深さまで及んでいて、この「フルリーヌ」とよばれる石灰岩の洞窟に空いた無数の亀裂のおかげで、冷たい風とこの洞窟特有のカビがうまく循環しています。
そこに青カビの「ペニシリウム・ロックフォルティ」の繁殖をうながすために、地元で栽培されたライ麦のパンを洞窟内に配置します。3ヶ月もするとパンはきめの細かい灰色のカビでおおわれ、そのカビを乾燥させて粉末にしたものを新しく成形されたチーズに付着させ、青カビの増殖を促します。
熟成した「ロックフォール」は羊乳特有のコクと脂肪の甘み、そしてしっかりと入った青カビの刺激的な風味が、なんとも官能的な味わいに変化させていきます。
「ロックフォール」を製造するのは世界で7社のみ。いずれも製法は同じ伝統に基づいているものの、それぞれに異なる個性のチーズを造り出しています。ガブリエル・クーレの造る「ロック・フォール」は、しっかりとした青カビの刺激があるものの、ミルクの甘味もしっかり感じられ、バランスのとれた味わいです。
ボルドーのフルボディの赤ワインや貴腐ワインとの相性がよく、ハチミツやイチヂクとの相性も抜群です。また、濃厚で甘口の日本酒とも意外なマリアージュもしてくれます。