スペインを代表する羊乳製チーズである。
場所はスペイン南部カスティーリャ・ラ・マンチャ
そこは荒涼とした大地で、時代遅れの騎士ドン・キホーテの物語が誕生した地でもある。
こんな荒れた地でも元気に育つのは山羊や羊たちだった。
そこに定住を始めた人間たちはそれら動物たちを家畜にし、自然とチーズ造りが行われるようになる。
その後この地は、カルタゴ⇒ローマ帝国⇒西ゴート王国⇒8世紀初頭にはイスラム教徒のサラセン人に征服され、レコンキスタ運動によってキリスト教徒が国土を再征服する。
いくつもの王国の支配・宗教戦争があっても、チーズ造りは継続され続けた…その地の食文化として欠かすことができなったからだ。
そんな伝統的なチーズであることを、今も伝えるために、マンチェゴの表皮には「エスパルト模様」がつけられている。
”エスパルト”とは、葦の一種の名であり、かつてこの草で編まれたカゴでチーズを成形していた。それによって、独特な模様がチーズの表面についた。
現在では、衛生上プラスチックの型が使用されているが、歴史と伝統を忘れないために、この模様がつけられている。
さらにD.O.P.という制度により、この模様がなければ、もはやマンチェゴではない。
12世紀から19世紀まで羊毛産業として盛況していたこの地が合成繊維の発明によって、羊毛業が衰退し、羊毛用に飼育されていた羊たちが乳製品用に転用されるようになり、飛躍的に生産量が増した。
やがて、このチーズは世界中に輸出されるようになり、スペインのフラッグシップチーズにまでのし上がった。
熟成期間も3カ月から2年と様々だ!
旨みたっぷりのケソ・マンチェゴ、たまには古代からつづくチーズの歴史に想いを馳せて食すのも悪くない…
ラ・マンチャのワインと共に!