ブルーチーズの王様といえば、どんなチーズを思い浮かべるだろう。
多くの日本人であれば、【ゴルゴンゾーラ】と答えるかもしれない。
しかし、フランス人に言わせれば【ロックフォール】をおいて、他に存在しないと答えるだろう。
世界最古のブルーチーズともいわれ、国内で最初にAOC(原産地呼称制度)に認定された由緒正しいブルーチーズだからだ。
そんなロックフォールと同じ製法で造られた牛乳製のブルーチーズが存在する。
フランスの中央高地(マッシフセントラル)の中南部、特にロット県、アヴェロン県、ロゼール県で生産されている牛乳製のチーズがある。
その名は、フランス中西部と南西部に特徴的な、広大で高い石灰岩の台地であるコーズ高原に由来する。
しかし、この名前が名づけられる前は、【ブルー・デ・アヴェロン】と呼ばれていた。
ただ、その呼び名でさえ1925年にロックフォールがAOC認定されたことがきっかけとなっている。
それは、偽のロックフォールが市中に出回り、収集が付かなくなり偽ロックフォール裁判が頻発したため、フランス政府がロックフォールの生産地をコンバルー山に限定され、ラコーヌ種の羊の乳のみを使用することが規定されたからである。
このことによって、今まで悪気なくロックフォールと思って作っていたチーズ生産者も名前を変えなければならなくなった。
ロックフォールを熟成させるためには、天然にできた洞窟で熟成させなければならないとある。
石灰岩の台地であるコース高原には、それに適した水の浸食作用によりできたフルリールと呼ばれる洞窟が無数にある。
そんなチーズセラーのことを「カーブ・バスタード」と呼ばれていた。
もちろん、ロックフォールは規定された洞窟でしか熟成してはならず、AOC認定されたあとは、それ以外の「カーブ・バスタード」の多くは放棄されてしまった。
このように、非常に不利になってしまってロックフォール生産者以外の周辺のチーズ生産者だが、その歴史は古く、
17世紀には、多くのチーズセラーが稼働しており、良質なチーズを生産していた。
その伝統と製法を守り続けてコツコツと普及活動をした結果、ついに1979年にAOC(原産地呼称制度)に認定され、1996年にはAOP(原産地名称保護制度)に認定された。
名前もコース高原を知ってもらいたいという思いから、【ブルー・デ・コース】と名付けられた。
現在は、安全面を考慮し低温殺菌した乳をしようし、非常に滑らかでマイルドな優しいブルーチーズとなっている。
その存在は、すでにロックフォールとは全く違う地位を築きつつある。