日本では、ブルーチーズの説明の中で「世界三大ブルーチーズ」という言葉がよく出てくる。
一つはお馴染みのイタリアの「ゴルゴンゾーラ」、2つ目に世界最古のブルーチーズといわれるフランスの「ロックフォール」、そして今回ご紹介するのが、イギリスで造られている。
である。
※残りの2つのチーズの解説はこちら⇒ゴルゴンゾーラ、ロックフォール
実は、スティルトンには「ブルースティルトン」と「ホワイトスティルトン」という2種類がある。
”ブルースティルトン”は、文字どおり青カビが入ったブルーチーズで、
”ホワイトスティルトン”は青かびを入れないで造るチーズである。
ホワイトスティルトン
ブルースティルトン
では、そのルーツ辿ってみよう。(スティルトンの料理はこちら⇒)
イギリスにチーズの文化が伝わったのは2千年近く前のローマ時代まで遡るが、より広く造られだしたのは14世紀半ばにペストの”まん延”によって労働力の半分の人口を失い、これまでのような封建的な領主が農民たちを使役していた荘園制度が崩壊していき、16世紀初めごろに商業主義農業が始まったころである。
そこで、大ヒットしたチーズがチェシャーチーズであり、そののちにその製法をもとに作られるチェダーチーズだ。
チェダーチーズの製法には、チェダリングという出来立てのチーズ(グリーンチーズ)を真っ二つにし、2段に重ねてホエーの排出をより促す作業を行う。これにより、水分量が少なく、また作業工程が多くなるので、乳酸菌の活動が長くなり、より酸度の高いチーズになる、そのことによって長期保存が可能なチーズになった。(酸度があがると他の菌類が繁殖しにくくなる。)
そして、スティルトンもこの製法を採用している。しかし、重しを乗せて、さらに水分を輩出する圧搾は緩めにしているので、チェダーより水分の多いチーズが出来上がった。
そのため、酸味が強く、カビが生えやすいチーズが出来上がったのである。
このチーズを、有名にしたのが、18世紀初頭、ヨークとロンドンの中継地にあったスティルトンの旅館「ベル・イン」を営むクーパー・ソーンヒルが、近隣のレスターシャーの街メルトン・モーブレイで作られていたソフトタイプのブルーチーズを客に出すようになったことが、きっかけとなった。
このサービスは宿泊客に好評で、実業家精神に富むソーンヒルは、1700年代半ばには毎週千個ものチーズをロンドンで販売するようになった。。
そのため、このチーズは生産地ではなく、有名になった街の名前にちなんで名付けられた。
当初は小規模農場で造られていたスティルトンだが、製造工程が複雑で、出来上がるまで時間がかかることから、やがて作り手同士が協力するようになり、1875年には小さな工場が設立されてそこで手作り生産が開始された。1910年には〈スティルトン・メーカーズ・アソシエーション〉が登録商標となり、生産地をノッティンガムシャーとダービーシャー、レスターシャーの3州に限定されている。
早くに工場化すすんだため、産業革命によるイギリスの地方で造られていた上質なチーズの絶滅から免れた数少ない一つがスティルトンである。
残念ながら、イギリスのナチュラルチーズのほとんどが、絶滅してしまった。
それが近年の自然回帰の流れによって、伝統的なチーズ造りが復活しつつあるようだ。
合わせる飲み物は、もちろん貴腐ワインややポート酒のような甘口のワインとの相性がいいのだが、、ブランデーやウイスキーなどのハードリカーともよく合う。
おしゃれにシガーでもたしなみながら、バーカウンターで上質なウイスキーの入ったグラスを傾けながら、スティルトンを楽しむのも良さそうだ。
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